人間たちの話
柞刈湯葉(いすかりゆば)のSF短編集『人間たちの話』
この表紙のゆるい感じのイラストからカバー買いしてしまった。
あと、手軽にサクッと読みたい気分だったので短編集が丁度よかった。
現実の生活に少しSF要素をとり入れたような話もあったりしたし、物語も日常系という感じがしてゆるくてライトなSFという印象を受けた。短編小説が6篇収録されている。
例えば『たのしい超監視社会』は全体主義の超監視社会に住む人間の話。
監視社会といえばジョージ・オーウェルの『一九八四年』を連想するが、著者はその延長線上の物語を書きたいという好奇心から書いたという。
確かに今はYoutubeで自分の生活を開け放つことができて、それを不特定多数の人に監視されるんだから監視社会といってもいい。それにYoutubeなんて娯楽として成立してるものだから「たのしい監視社会」である。
人間が楽な方に流れるようになったことへのシニカルな笑いで楽しめた。
次に『人間たちの話』。
著者が生物学研究者だったというバックグラウンドから生まれたのだろう。
地球外生命体を探す研究者の話なんだけれども、
地球は同質に満ちている。異質な他者を求めるのならば、真空の闇に隔てられたほかの星に求めるしかない。
このように地球、人類は同質だと主人公が決めつけてしまっているのだが、
込み入った事情で同居している甥っ子との関わりでそれに変化が現れる。
地球外への憧れが思わぬところで家族という”内”に向く。SFの話かと思わないぐらいに家族の物語だった。(それでもここに出てくる宇宙の話は創作だと著者もあとがきで述べている。)
このゆるくライトなSF短編集いかがだろう